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京都地方裁判所 昭和42年(行ウ)9号 判決

京都市中京区聚楽廻東町二一番地

原告

山腰三松

右訴訟代理人弁護士

有井茂治

同市同区柳馬場二条南入

被告

中京税務署長

中山静雄

右指定代理人

北谷健一

江藤邦弘

黒田守雄

戸上昌則

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告訴訟代理人は、「被告の原告に対する昭和四一年九月三〇日付第二六一号贈与税金四七万七、一六〇円および無申告加算税金四万七、七〇〇円の賦課決定処分(以下本件処分という。)は、これを取消す。」との判決を求め、その請求の原因として、

「一、原告は、別紙物件目録記載の物件(以下本件物件という。)を訴外山田進一より賃借し居住していたところ、昭和二四年一月二五日、これを同訴外人から代金二万五、〇〇〇円で買受け、その所有権を取得したが、その際、八卦見などの意見を聞いたところ、その所有権登記名義を原告名義にすると、不慮の災難に遭うかも知れないというので、他人名義を借りることとし、実姉の訴外中嶋はなの名義を借りて、一時的に同年一二月二九日、本件物件につき、京都地方法務局下京出張所受付第二五五一九号を以て、売買を原因とする同訴外人名義の所有権移転登記を経由した。

二、しかるに被告は、原告に対し、原告の訴外中嶋名義の右登記をとらえて、原告が、同訴外人に対し、本件物件を贈与したものであるとして、本件処分をした。

よつて、原告は、被告に対し、違法な本件処分の取消を求めるため本訴に及んだ。

三、被告の本案前の主張は争う。

大阪国税局長が、原告の同局長に対してなした審査請求を棄却する旨の裁決をなし、右裁決書が、昭和四二年五月一七日原告に到達したことは認めるが、原告の代理人森川幸次郎は、大阪国税局協議団京都支部所属協議官清野輔より、右審査請求棄却の裁決に対し、再審査請求をなしうる旨の教示を受けたので、原告は、同年六月一六日右裁決に対する再審査請求を、大阪国税局長に対してなしたところ、同年八月一六日、同局長は、右再審査請求を却下するとの裁決をなし、右裁決書は翌一六日原告に到達した。

よつて、本訴は、行政事件訴訟法第一四条第四項の期間内の訴提起であり、適法である。

と述べた。

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、

「一、本訴において、原告は、本件処分の取消を求めているが、行政事件訴訟法第一四条によれば、取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から三ケ月以内に提起しなければならないとされるところ、原告が、本件訴訟を提起した昭和四二年一〇月二日は、大阪国税局長の裁決書が原告に送達された同年五月一七日より起算して三ケ月をこえることが明らかであつて、不適法な訴というべきである。

二、本件再審査請求は、行政不服審査法に規定する再審査請求をなしうる場合に該当しない不適法な請求であり、原告主張のように、協議官清野輔が、原告の代理人森川幸次郎に対し、再審査請求をなしうる旨の教示をなした事実はない。」

と述べた。

立証として、原告訴訟代理人は、証人森川幸次郎の証言を援用し、乙号各証の成立を認めると述べ、被告指定代理人は乙第一ないし第三号証を提出した。

理由

一、大阪国税局長が、原告の同局長に対してなした審査請求を却下する旨の裁決をなし、右裁決書が、昭和四二年五月一七日原告に到達したことは、当事者間に争いがない。

そして、原告のなした本件訴の提起日が、昭和四二年一〇月二日であることは本件記録上明らかである。

二、成立に争いがない乙第一ないし第三号証ならびに証人森川幸次郎の証言を綜合すると、大阪国税局協議団京都支部所属協議官清野輔は、原告の代理人森川幸次郎に対し、審査請求棄却の裁決に対し、再審査請求をなしうる旨の教示をしていない事実を認めうる。

三、してみると、本件再審査請求は、法律上それをなしうる場合に該当せず、かつ、それをなしうる旨の誤つた教示もないのであるから本件訴は、審査請求棄却の裁決書が、原告に送達された昭和四二年五月一七日より起算して三ケ月をこえる不適法な訴というべきである。

よつて、本件訴を却下し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小西勝 裁判官 杉島広利 裁判官 寒竹剛)

物件目録

京都市中京区聚楽廻東町二〇番地の七

一、宅地 七五・二〇平方米(二二坪七五)

右同所

家屋番号同町一四五番の二一

一、木造瓦葺二階建、店舗

一階 五六・一九平方米(一七坪)

二階 五二・二三平方米(一五坪八〇) 以上

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